2007年 05月 10日 ( 1 )

 

フロイド・メイウェザーvsオスカー・デラホーヤ

 すっかり遅くなってしまいましたが、先週末に行われたボクシングのメイウェザーvsデラホーヤ戦の感想です。
 確か何かの世界タイトル戦になっていて、一応デラホーヤの防衛戦という扱いだったと思いますが、この2人の対戦が見られるのなら、タイトルなんてどうでもいいです。

 戦前の予想は7:3かせいぜい6:4でメイウェザーが有利という見方が大半だったかと思います。全階級を通じて一番強いと思われる選手に贈られるパウンド・フォー・パウンドの称号を欲しいままにするメイウェザーだけに当然といえば当然の予想。私の予想も同様でした。
 メイウェザーのスピードと技術を見たことのある人なら、たぶん誰もがそう思うのではないでしょうか。それぐらい異次元のスピードなんです。
 長いボクシングの歴史の中でも、最高のスピードと技術を身に付けた選手といえるのではないでしょうか。

 そんなメイウェザーを相手にするデラホーヤは、今回の試合を最後に引退することを表明しているぐらいで、年齢もピークを過ぎた34歳。今回の試合も一年ぶり。
 でも、前回の試合では「もうダメだろう」という前評判を覆して、見事な勝利をおさめていました。すでにプロモーション業でも成功を納め、富も名声も十二分に得ているはずの彼が、もう一度ここまでの状態に仕上げて、なおかつここという場面での勝負強さも失っていなかったことは驚きでした。
 正直、デラホーヤは才能に恵まれているボクサーという印象はなく、努力と意志の強さでここまで来た人だと思います。才能に溢れるボクシングをするメイウェザーとは対照的。才能だけで比べたら10:1ぐらいの差があるんじゃないかと思います。

 前置きが長くなってしまいましたが、試合はそんな戦前の大方の予想を覆し、1Rからデラホーヤペースで進みます。メイウェザーが得意とするスピードのある左のリードジャブやロングレンジの左フックが、ことごとくデラホーヤのガードに阻まれてクリーンヒットしません。
 ガードをあげたままプレッシャーをかけるデラホーヤに、下がり続けるメイウェザー。得意のスピードあるフットワークも、完全に封じられてしまっている感じ。
 でも、1Rはプレッシャーを掛けられながらも手を出し続けていたので、あるいはメイウェザーがポイントを取っていたかもしれませんね。前に出てペースを取っていても、手を出さないとポイントになりませんから。それが、勝敗の明暗に結構効いていたのではないかと思います。

 ディフェンスによってメイウェザーのスピードを封じたデラホーヤは、前に出ながら対格差を活かしたボディーを連打してメイウェザーのスタミナを奪い、足を止める作戦。前半はこの作戦が完全にハマっていました。パンチが相打ちになる場面や、カウンターを合わされる場面もありましたが、体格に勝るデラホーヤの前進を止めることはできません。
 前半は完全にデラホーヤペース。ポイントも1R以外は全部デラホーヤが取っていたのではないかと思います。
 あの、メイウェザーのスピードを努力の末に積み上げたディフェンス技術で封じることができるんだ、ということだけで衝撃でした。得意のスピードを封じられたことでメイウェザーも焦り、デラホーヤは「勝てる」と思ったのではないでしょうか。

 でも、そのままで終わらないのが、さすが世界最高峰の2人の対戦です。
 6Rぐらいから、メイウェザーは先に手を出さず、デラホーヤに攻めさせてカウンターを合わせる作戦にチェンジ。スピードでは圧倒的に勝っていますから、手を出させてガードが空いたところに合わせれば、自分のパンチが先に当たりますからね。
 攻める際も、顔面へのパンチはデラホーヤの固いガードに阻まれるので、ディフェンスされにくいボディーに狙いを変えたようです。それまでデラホーヤがやっていたことをメイウェザーがやり返している感じですね。

 同じことをやれば、元々の身体的ポテンシャルは圧倒的に高いメイウェザーが有利になります。デラホーヤは前半で集中し過ぎたのか、後半はややスタミナが切れて来たようでしたので、スピードの差はより明確に。しかも、ボディーも結構効いていたようです。
 戦前の予想では、デラホーヤに勝ち目があるとすれば、試合が長引いたときだという見方が多かったですが、それとは逆に前半はデラホーヤペースで、後半はメイウェザーという展開。
 9Rを終わったところで、個人的にはポイント的には互角ぐらいかなと思いましたが、残りの10、11Rをメイウェザーが取り、最終12Rはデラホーヤもがんばって反撃しましたが、以前のように逆転まで持って行く体力は残っていなかったようです。

 判定は2ー1のスプリットでメイウェザーの勝利。1人デラホーヤに付けていたジャッジもいましたが、レベルの高い試合だと判定が割れるラウンドも多いので、どちらも妥当なジャッジだと思いました。
 間違いなく、ボクシング史上最高のレベルの試合になると言われていましたが、メイウェザーやデラホーヤのこれまでの試合からすると、意外なほど「普通の試合」というか地味に見える内容だったのではないかと思います。でも、最高峰の技術とスピードがぶつかると、結局は普通のボクシングになるということは、ある意味ボクシングの技術レベルの高さというか、完成度の高さを表しているのではないかと思いました。

 で、この試合をここまで緊張感ある内容にしたのは、間違いなくデラホーヤの努力の成果だったと思います。負けはしましたが、試合を作っていたのはデラホーヤだったと。
 試合後、若い勝者が「もう照明すべきことがない」と引退を口にし、戦前は「この試合が最後」と名言していたデラホーヤが言葉を濁していたのが印象的でした。
 勝ちはしましたが、メイウェザーがここまで苦戦した試合は初めてですし、内容的にも明確に白黒がついたわけではないと思います。できれば、2人の再戦も見たいところですが、デラホーヤのあの作戦は2度目は通用しないでしょうね。
 しかし、良いものを見させてもらいました。
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by masumania | 2007-05-10 01:00 | キック/格闘技