『大山倍達正伝』

c0013594_1434143.jpg 3連休は恥ずかしながら風邪をひき、嫁さんの実家で寝込んでいたわけですが、おかげで読みたかった本をゆっくり読むことができました。
 その中の一冊が、この『大山倍達正伝』という本。その名の通り、極真空手の創始者・大山倍達氏について書かれたノンフィクションです。ここ何年か、本といえばノンフィクションしか読んでいないような気がしますが、こういう面白い作品に出会うと、ノンフィクションがこれだけ面白いのだから、フィクションで物語を新たに作る必要なんてないんじゃないかとすら思ってしまいます。
 晩年には自ら公言していたそうですが、この人は韓国生まれの韓国人(変な書き方ですが韓国生まれの日本人もいますし、日本生まれの在日韓国朝鮮人でもないという意味で)でして、日本にも韓国にも戸籍があり、双方に家族もいたようです。そのこと自体は特に珍しいことではないのかもしれませんが、軍人を志して密航で日本に渡って来たり、戦後は空手修行に励みながら民族運動にも関わったり、アメリカ遠征をへて空手家として売り出すようになり、自らの“伝説”を語るようになったりと、その生涯の中でアイデンティティが「日本人」と「韓国人」、そして「東洋人」との間で揺れ動いて行く様が、とてもリアルに感じられて面白かったです。
 “伝説”として語られて来た山ごもりや牛殺し、アメリカ遠征などの逸話に対しても細かく検証されていて、こうした“伝説”について知っている人間にとっては、その辺りも非常に面白く読めました。やや細かすぎるとも思える記述もありますし、当時の日韓状況に関する説明が長すぎるように感じる人もいるかも知れませんが、単なる両論並記ではなく、著者が自らの立ち位置をはっきりさせながら書いていることは、ルポルタージュの手法としては正当なものだと思います。少なくとも私は退屈しないで読めました。
 600ページを超える物量は、気軽に手に取れる感じではありませんが、興味を持った部分を拾い読みするだけでも十分に楽しめると思います。私もそのつもりで手に取ったら、1時間以上も夢中になって立ち読みした挙げ句に買って帰って来てしまいましたから。
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by masumania | 2007-01-10 14:04 | 本/マンガ  

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