カテゴリ:本/マンガ( 15 )

 

『コッペリオン』

c0013594_3112862.jpg 久々に、最近ちょっと気になったマンガの紹介などを書いてみようと思います。
 現在、ヤングマガジンで連載されている『コッペリオン』という作品。作者の井上智徳という人は新人みたいですね。新人としては異例の抜擢だとか。でも、その辺にはあまり興味がありません。
 興味を魅かれるのはその内容。簡単にいうと、今から30年後ぐらいの近未来を舞台に、お台場に作られた原発がメルトダウンを起こして廃墟になってる東京に、遺伝子操作によって放射能に対する抗体を持った女子高生の格好をしたコッペリオンと呼ばれる女の子たちが、自衛隊の特殊任務を受けて潜入するというお話。舞台に今住んでいる場所の近くが出て来たりして、知ってる地名や景色が登場するのも楽しめるのですが、今の時代に原発の事故をテーマに作品を発表したのがすごいなと思っています。
 というのは、環境問題の中でも地球温暖化がクローズアップされている現在、CO2を排出しない原発には注目が集まっていて、「原発ルネッサンス」なんて呼ばれてるような状況だからです。電力会社も「原発はクリーン」というイメージで売り出そうとしていて、この前までそんなCMも流れていました。(さすがにJAROから「原子力発電にクリーンという表現を使うことはなじまない」との通達を受けたみたいですが)
 最近では、柏崎の原発の事故が記憶に新しいですが、あの原発も地元で使う電力を作っていたわけではなく、東京で消費される電力を作っていたんですよね。で、発電が止まって、さぞ東京の人が困っているだろうと思って訪れた市長だか知事だったかが、何も変わらず電力を消費している東京を見てショックを受けたという話もありました。
 そういう文脈からも、東京のど真ん中に原発を作って、それが事故を起こしてしまうというテーマはタイムリーなのかなと。しかも作中では、放射能で汚染されて封鎖された東京に、密かに他国から引き取った放射性廃棄物を持ち込む組織なんかも登場して…。
 「そんなにまでして電気が欲しいんか」という主人公の言葉が胸に響きます。(こんな夜中に電気を使いながらブログの更新なんぞをしているので)
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by masumania | 2009-05-09 03:36 | 本/マンガ  

ワクワクするエコ

c0013594_1311967.jpg 最近読んだ本の中から。
 田中優さんという人が書いた『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』という本です。

 環境問題について考え始めると、知れば知るほど深刻な状況ばかりが見えて来て、出口が見えなくなってしまったり、無力感に苛まれたりしませんか?
 そんな時に読むと、前向きな気持ちになれるのではないかと思える一冊です。

 とはいっても、出だしは結構深刻な話の連続です。数々のデータを示し、地球温暖化がすでに「“試合終了”までのロスタイム」と厳しいお話。ある程度温暖化が進んでしまい、これまでCO2を吸収していた海が逆にCO2を排出し始めてしまったり、永久凍土が溶けてCO2の20倍の温室効果を持つメタンガスが大量に放出されたりしてしまうと、「温暖化はもう人間の手ではどうにもできない」として、温暖化対策は「この10年が勝負」だと警告しています。

 ここまでだったら、普通にある“温暖化の恐怖”を書いた本と変わりませんが、この本の(著者の)偉いところは、後半部分でそれに対して自分たちがどうすればいいかを、きちんと書いていてくれること。
 それも、省エネのために“とにかく我慢しろ”とか“便利さを捨てろ”というのではなく、「仕組み」を変えることで、CO2は大きく減らすことができると説いています。しかも、そのための技術ややり方についても「もはや、すべての問題に解決策が出揃っている」と。
 まあ、その具体的な仕組みややり方については本書を読んでもらえればと思うのですが、例えば電力会社の料金体系を変えるだけでも実は大きな省エネが可能なんじゃないかとか、なかなか示唆に富んだ内容です。(突っ込みどころがないとはいいませんが)

 で、そういう仕組みを変えるとか大きな話をした後に、ではそのために日常生活の中では具体的に何をすればいいのかを解説してくれます。それは、本当に小さな努力でできそうなことだったりするのですが、それが大きな仕組みを変えることにつながっているということがイメージできると、ただコツコツと小さな省エネに取り組むよりもやる気が起きますよね。
 気が付けば、私も後半部分はワクワクしながらページをめくっていました。

 ”温暖化を解決するための技術も方策も実は出そろっている”というのは、別なところでも聞きました。“あとは、私たち消費者(有権者)がそっちを選択するか否かだ”と。
 でも、そっちを選択するためには、まず温暖化をはじめとする環境問題についてきちんと知らなければなりません。そして、その問題の解決のためには、どうすればいいのかという考え方の筋道を知ること。解決策があるといっても、環境問題みたいな複雑な問題は“これをするだけでいい”みたいなマニュアルがあるわけじゃないので、基本的な考え方を身に付けて、あとは自分で考えられるようにならないと駄目だと思います。
 まあ、どんな問題でもそうだと思いますけどね。ダイエットだって“リンゴだけ食べてればやせる”とか“炭水化物を食べなければやせる”みたいな強引なマニュアルは基本的に嘘で、摂取カロリーと消費カロリーとか、人間に必要な栄養のバランスとか、基本的な考え方を身に付けるのが一番の早道だったりしますし。

 地球温暖化について、その基本的な知識と考え方を知るには、今のところ最良の入門書なのではないかと思います。電力会社とかには敵視されそうですけどね…。
 興味を持たれた方は、ぜひご一読を。
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by masumania | 2008-08-01 23:30 | 本/マンガ  

バイクでワーカホリック

c0013594_3332151.jpg すみません。タイトルはこじつけです。

 内容は、ただの最近読んだ本の感想です。

 『搾取される若者たち——バイク便ライダーは見た!』という本。
 過激なタイトルがついてますが、中身はそれほど過激という感じではなく、読みやすく書かれています。すぐ読めます。本を読むのが早いとはいえない私でも、原稿を書いてる合間に一晩で読めました。

 簡単に要約すると、“好きなこと”を仕事にしたバイク便ライダーが、いかにワーカホリックになり、そして“搾取される若者”になっていくかという仕組みを明らかにした本。ということになるでしょうか。
 私と同世代の著者は、大学院に行くが学費を稼ぐために好きなバイクを使ったバイク便のアルバイトをしながら、ついでに社会調査もしてしまったということみたいです。働く現場で、すぐ“搾取の仕組み”とかを考えちゃう著者の思考に、違和感を覚える人もいるかもしれませんが、私はむしろ同じ思考パターンを見た感じがして共感してしまいました。
 特に「仕事による趣味の更新」なんて辺りのことは、実際にバイクを趣味にしてる人じゃないとわからないかもしれませんが、思わずニヤニヤしてしまいました。

 この著者の偉いなと思うところは、“搾取される”なんて過激な言葉は使っていますが、不安定な職業にもかかわらずワーカホリックを作り出すシステム(著者は”トリック”と呼んでいます)を、経営者が意図的に作り出していると決めつけるのではなく、「わなをかけているのは彼ら自身……」というように労働者も含めた「職場のトリック」としているところですかね。
 こんなこという私自身も不安定なフリーランスという立場なのですが、その状況を自ら呼び込んでいるような部分もあるわけですし。

 “好きなこと”を仕事にするということは、世間的には推奨されているようですが、その危なさについては私も以前から考えていたことがあるので、その辺のことは、また改めて書いてみたいと思います。
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by masumania | 2008-07-31 23:27 | 本/マンガ  

『僕とポーク』

c0013594_444919.jpg 最近、読んだ本やマンガの感想ばかりで「仕事してんのか?」と思われてそうですが、してますよ。忙しいときほど、移動時間とかちょっとした空き時間に活字が読みたくなります。自分が書く量よりも読む量を多くしておきたい、出す量よりも入れる量を多くしておきたいということなのでしょうか。
 こちらに感想を書き込むのは、そのごく一部で、それ以外にも雑誌とか仕事の資料とか新聞とか結構読んでますから、どれだけ活字中毒なんだって感じですね。まあ、このお仕事されてる方の中には、私なんか比較にならないほど本を読んでいる方が大勢いらっしゃいますが。

 で、今回は、ほしよりこという人の描いた『僕とポーク』という作品です。
 ほしさんは有名な『きょうの猫村さん』の作者です。私も知り合いから借りて結構ハマりました。
 でも、個人的にはこの『僕とポーク』のほうがオススメです。
 『猫村さん』と同様に、同じ大きさのコマ割りに鉛筆で描いた背景もほとんどないような絵なのですが、子どもの頃に感じた世界の不条理さだとか、それに対する自分の無力感だとか、ちょっと関係ないけど大学に入ったときの周りの浮かれた感じだとか、身の回りの人が亡くなったときの悲しさとはまた別の喪失感だとか、そういうものがとても伝わってきます。
 上に挙げたものは、つまり私が過去に感じていたものですから、別の人が読めば、また別のものが伝わってくるのかも知れません。とにかく、こんな絵とこんなコマ割りでこれだけのことを表現できるのだから、細かく描き込まれた絵とか複雑なコマ割りとか、現在までのマンガの技術的進化ってなんだったんだろう?と考えてしまいました。
 別に技術的な進化を否定するつもりは全然ありませんが、それよりもまず何を表現したいのかが大切だよな、と思った次第です。


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 あと、マンガではないのですが、豚つながり(?)で。
 森達也さんの『いのちの食べ方』という本がうちに転がっていたので読んでみました。中学生向けのシリーズなのですぐに読めました。でも、内容は中学生どころか大人が読んでも十分に面白いもの。
 牛とか豚が食肉になるまでの過程を主に書いているのですが、このテーマではなかなか触れられない被差別部落の話をきちんと取り上げているのが、個人的には非常にポイントでした。
 私の身の回りでは、環境問題の絡みもあってか、肉を食べるか食べないかみたいな話を聞くことが比較的多いのですが、なかには「元々日本人は肉を食べてなかった」みたいなことを言う人もいたりします。「あなたの言う”日本人”には、昔から牛馬の解体に携わっていて、今も食肉関係の仕事についている人が多い被差別部落民は入らないのですか?」とか聞いてみたくなってしまうのですが、そういう人には今度からこの本を勧めてみることにします。
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by masumania | 2008-05-26 03:40 | 本/マンガ  

下山事件 最後の証言

 先日投稿した記事に続いて、下山事件関連の本を読んでみました。『下山事件 最後の証言』という本です。
 やはり、まるで推理小説のような展開に引き込まれてしまいました。この本は、前回紹介した森達也さんの本などと並んで下山事件の「平成三部作」と呼ばれるもので、内容的にカブる部分も多いのですが、それでも一気に読み切ってしまいました。
 森達也さんの本では、終わり方がやや楽屋落ちっぽいというか、少し不満が残る感じだったのですが、こちらは最後まできっちり書ききっている感じ。ただ、その分やや風呂敷を広げ過ぎかなという気もしました。
 2冊合わせて読むと、自分なりにちょうどいい落としどころを見つけられるかもしれません。
 なんか、ここまで来ると、行きがかり上「平成三部作」のもう一作も読まなければいけないような気がしてきました。自分としては、だいたい落としどころが見つかったので、別にいいんですけどね。

 あと、下山事件を扱っていると聞いて手塚治虫の『奇子』という作品も購入して読んでみました。まあ、これは前々から読みたいと思っていた作品だったので、これを機会にという感じでしたが。
 結論からいうと、話のネタ振りとして少し登場するだけですが、結構よく取材しているなという感じでした。その後の展開の衝撃が強くて(だいたいの荒筋は知っていましたが)、事件のことなんかどうでもよくなってしまいますけどね。
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by masumania | 2008-05-24 23:08 | 本/マンガ  

下山事件(シモヤマ・ケース)

 何がきっかけだったのかさえ忘れてしまいましたが、なぜか下山事件(wikipedia)というものに興味を持ち、ちょっと調べてみたら森達也さんが下山事件に関する本を書いていること(しかも60年近く前の事件なのに割と最近になって)を知ったので、早速買って読んでみました。
c0013594_575487.jpg 『下山事件(シモヤマ・ケース)』の文庫版です。

 当時の国鉄総裁が死んだ(殺された?)事件という以外は、何の予備知識もなく読み始めたのですが、移動時間はもちろん、睡眠時間を削ってまで読み進めてしまうほど引き込まれました。
 予備知識がなかったせいもありますが、次から次に怪しげな(?)証言や証人が出てきたり、関係者が明らかになったりし、しかもその事実や出てくる人物が妙に関連しあっていたりして、いったいこの事件はどうなっているのか?気になって仕方がなくなってしまいます。
 本の中で、長年下山事件を追っている記者が「下山病」という言葉で表現していますが、確かに病気なみに取りつかれてしまう感じかもしれません。

 よく書けたノンフィクションを読むと「事実がこれだけ面白いのだから、わざわざフィクションを考え出す必要なんてないんじゃないか?」と思うことがありますが、この本がまさにそうでした。
 下山事件という事件が面白いのか、それとも森達也の書き方が面白いのか? 確認するためにも他の下山事件関連本も読んでみたいと思います。
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by masumania | 2008-05-21 00:59 | 本/マンガ  

おめでとうございます!

c0013594_23591098.jpg このブログのリンクにもあるさいたさえの車到山前必有路の管理人である城戸久枝さんの著作『あの戦争から遠く離れて—私につながる歴史をたどる旅』が、なんと第39回大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作品に選ばれました。
 城戸さんとは結構前に知り合って、私の引退試合を見に来てくれたりとか、なんだか仲良くしていただいてたんですが、初の著作で受賞という快挙です。考えてみれば、試合を見に来てくれた時も、この本の執筆中で忙しかったはず。そんな中、足を運んでもらえて、今さらながらありがとうございます。
 お父さんの話とか、ご本人の口から聞いたことはなかったのですが、本で読んでみてビックリなことがたくさん。厚い本ではありますが、読みやすくて一気に読んでしまいました。興味のある方は、書店で買ってみてください。今なら平積みになっているでしょうし、読みごたえのある量と内容の割に価格も安めです。

 最後に、城戸久枝さん、おめでとうございます!
 受賞と結婚で二重の喜びですね。予告どおり次からは「先生」と呼ばせていただきます(笑)
 サインもらっておいてよかった。
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by masumania | 2008-04-07 23:58 | 本/マンガ  

『毎日かあさん〜出戻り編〜』

 また、長いこと放置してしまいました。

 とりあえず、本日読んだマンガのことなどを。
 以前からずっとファンだった西原理恵子さんの『毎日かあさん』。
 面白くて、笑わせてくれて、それでいて子育ての現実をすごく踏まえていて、すごく大切なことを教えてくれる。そんなマンガです。

 今回の『出戻り編』は4冊目の単行本。
 家庭内で、いろいろとあったということはニュースにもなっていて知っていたので、ある程度は覚悟して読みました。
 読みはじめても、笑わせてくれる面白さはそのままなのですが、最後は涙が止まりませんでした。
 私は本やマンガを読んで泣いてしまうことは、ほとんどないのですが、我慢ができませんでした。
 今までマンガ読んで泣いたのは、やっぱりこの人のかいた「うつくしいのはら」ぐらいですかね。
 この人の作品には、何か琴線に触れるものがあるみたいです。


 いつもの面白さは変わりませんが、これから読まれる人は、ある程度覚悟を決めて読んだ方がいいと思います。
 油断して電車の中なんかで読むと、やばいと思います。
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by masumania | 2007-07-21 23:23 | 本/マンガ  

『ルポ 改憲潮流』

c0013594_13292423.gif 最近、読んだ本シリーズです。
 斉藤貴男の『ルポ 改憲潮流』という新書。
 今の「改憲」を巡る動きがどのような潮流の中で行われようとしているのかを追ったルポです。ビラをポストに入れただけで逮捕される、「戦争反対」と落書きしただけで公安に捕まる、とかそういう表面上のことだけでなく、政界や財界の動き、先制攻撃に傾く米軍再編との関係など、丹念な取材と抑制の効いた文体が読ませます。
 憲法をかえてはいけない、とか、九条を守らなければ、みたいなことは全然書いていませんが、どんな流れの中で改憲が進められようとしているのかが、よくわかる構成。
 個人的に一番面白かったのは「立憲主義が危ない」という章。そもそも憲法って、権力を持っている国や政府に対して、やってはいけないこととか尊重しなければならないこととかを課したいわば制約なわけで、それが立憲主義というもののはずです。ところが、今の改憲論議を見ていると「国民の権利ばかりで義務が入ってないのはおかしい」とか立憲主義の基本がわかっていないんじゃないかという発言をする政治家が多いですよね。
 政府は法律を作ることを通じて国や国民を動かす権力を持っているわけです。そのかわり、作る法律は憲法に違反するものであってはならない。義務については、そっちの法律として作るのならありかもしれませんが、政府のしなければならないことを定める憲法に、国民の義務について盛り込むのは本末転倒もいいとこだと思うんですけどね。
 もし、「新しい憲法」としてそういう国民の義務も盛り込んだものをイメージしているならば、その前文には「立憲主義の放棄」を明記する必要があるんじゃないかと思います。

 憲法記念日なので、ちょっと固い話題を書いてみました。でも、最近そんなことばっかり考えてるような気がします。

【追記】
 以前、ブータンのGNHに関する記事の取材をしていた時に、外務省で行われた「ブータンと国民総幸福量(GNH)に関する東京シンポジウム2005」というシンポジウムの中で当時の外務大臣政務官の発言を読んだことがあります。
 その中で、この政務官が「現在ブータンでは新憲法の制定が間近になっておりますが、立憲君主国という同じ政体を持つ日本国としましては、日本国憲法を様々な意味でご参考頂けるのではないかと考えております」と発言しているのを見てびっくりしました。
 日本が“立憲君主国”だったのは戦前の話だと思うのですが…。
 まあ、政治家の憲法に対する理解なんて、そんなものだということでしょうね。
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by masumania | 2007-05-03 23:28 | 本/マンガ  

『マイノリティの拳』

c0013594_6285926.jpg 最近、読んだ本の中から。
 アメリカ在住の著者による「黒い肌」を持った5人の世界チャンピオンたちの「もがき」を描いたノンフィクション。史上最年少で世界チャンピオンとなりながら、プロモーターに食い物にされて借金ばかりが残ってしまっている選手をはじめ、3階級制覇を成し遂げながら、45歳にして「金のため」にカムバックしなければならない選手、4人の子どもの育児や家事に追われながら45歳まで現役を続けた元チャンピオンなどが登場します。
 マイノリティならではの貧困から抜け出すためにボクシングを選び、栄光もつかんだが、プロモーターにはファイトマネーをピンハネされ、引退後の安定した仕事も得られないままもがき続ける元チャンピオンたちの姿が胸に刺さります。

 個人的には「それでもアメリカではボクシングが”お金を稼ぐ手段”として成立しているんだな」と思いました。日本の場合、世界チャンピオンにならない限り、ボクシングをしないでその分働いた方が確実に稼げますからね。
 そういう意味ではビジネスとして成立しているあちらのボクシング界をうらやましく思わないではないですが、その反面、選手を食い物にして稼いでいるプロモーターたちが多いようで、その辺りの事情もこの作品のなかではリアルに描かれています。

 生活のために、貧困から脱出するためにボクシングをはじめる黒人選手たちと、仕事の時間を削って練習し、「生活のために」ボクシングを辞めなければならなかったりする日本人選手たち。「裕福な人間がグローブを嵌めるなんてのはジョークさ」という元チャンピオンの言葉に、両者ではハングリー精神の質が違うのだということを痛感させられます。
 でも、どちらも「マイノリティ」であることには変わりないんですよね。

 そう、実は日本のボクシング、あるいは格闘技の世界も、すごく「マイノリティ」が多いんですよね。在日コリアンの選手はそれを明らかにしていない人も含めて、相当な数にのぼりますし、県別でプロボクサーの数が一番多い県は圧倒的に沖縄だったりします。
 でも、そういう民族的、地域的なマイノリティはわかりやすい方で、それとは別に学歴的なマイノリティとか、社会にどうもうまくなじめない社会的(?)マイノリティとか、僕のような思想的マイノリティ(笑)とかを含めると、まあ、ほとんどみんなマイノリティですよね。格闘技とかやろうと思うような人間は。
 まあ、僕は人間は切り口を変えれば、どこかで必ずマイノリティだと思っているんで、そういう意味ではボクサーや格闘技の世界の住人に限った話ではないですが、少なくとも自分のことをマジョリティだと思ってる人間は少ないでしょうね。この世界には。

 そんな人たちにスポットを当てた『日本版・マイノリティの拳』をいつか書きたいなと思いました。
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by masumania | 2007-04-23 06:28 | 本/マンガ